13/11/02 フィデリオ トークイベント
みなとみらいホールでは、11月28日(木)、30日(土)にパーヴォ・ヤルヴィ指揮&ドイツ・カンマーフィルの歌劇「フィデリオ」(演奏会形式)公演が開催される予定で、私もチケットを購入済み。
この公演に関連して、音楽評論家 舩木篤也氏 "ドイツ・ブレーメン音楽祭&ベートーヴェン音楽祭 歌劇「フィデリオ」" 緊急報告トーク・イベント、なるものが行われるというので参加してきました!
【日時】2013年11月2日(土) 17:30〜18:30
【会場】レセプションルーム(6階)
イベント会場のレセプションルームに向かうエレベータの中は、クラオタっぽいおじさんばかりで、一人でやって来た私みたいなオバさんは他にいない。私って、このおじさん達よりオタッキー(少数派)なのねぇ〜、と腰の引ける心持ちで会場へ。募集定員は80名だったけど、集まったのは30人くらいかな。年配のご夫婦連れ、クラオタのおじさん、などが主な客層。女性もけっこういたのでホッとする。
この演奏会は、ドイツのブレーメン音楽祭、ボン・ベートーヴェン音楽祭、横浜みなとみらいホールの共同制作で、すでにブレーメン、ボンでは演奏会が終わっています。
10月中旬に、ボンのベートーヴェンフェストでの演奏会の録音がネットラジオで放送されたので、私も録音して聴きました。スッキリと引き締まった演奏で、歌手たちは澄んだ美しい声の人ばかりで、聴き応えがありました。(ただし、なぜか主人公のレオノーレがいまいち不安定な歌でちょっと残念)
舩木さんは、ブレーメン、ボンの公演を現地でお聴きになり、指揮者のパーヴォさん、フロレスタンを歌ったブルクハルト・フリッツさんにインタビューもされたそうです。(インタビューの録音もちょこっと聞かせてもらいました、パーヴォさんは低めの渋い声でスラスラと英語を話し、フリッツさんは滑舌の良いエネルギッシュな喋り声で、リリックな歌声とは印象がちょっと違いました。)
イベントは、まずはアーノンクール指揮のチューリッヒ歌劇場公演の映像を見ながら「フィデリオ」のあらすじと登場人物の紹介から始まり、ブレーメン、ボン、での演奏会の様子を、写真、音声、などを交えながらお話、といった具合に進みました。
<あらすじの説明の中で印象に残ったお話>
・この作品が作曲されたのは、フランス革命後にナポレオンが皇帝となった年、革命後のこの時代にも、女性は参政権を持っていなかった
・そんな時代に、主人公の女性が男に変装して自分の夫を救出する、という物語が、いかに斬新で、衝撃的でなものあったか、想像してみてほしい
<ブレーメン、ボンでの演奏会の様子>
・それぞれの演奏会会場(外観)の写真を見せていただく
・ブレーメンの会場はグロッケ(Die Glocke)という教会に併設されているホールで、クナッパーツブッシュの指揮する音楽会が開催されたり、ミケランジェリ(P)が録音に使用したことがある素晴らしいホール
・ブレーメンでもボンでも、クールなイメージのあるドイツ人に大喝采を浴びた
・歌手は、来日するメンバー(フリッツ、イヴァシュチェンコ、マギー)に言及
特にこのオペラの影の主役とも言える看守長ロッコ役のイヴァシュチェンコは、日本ではまだあまり知られていないバス歌手だが、丁寧に人物像を描いていて素晴らしい
レオノーレ役は急な代役(マギーはキャンセル)が歌って調子が今ひとつに感じられたが、マギーは世界的に活躍するソプラノで期待大
・フィデリオには長いセリフのある芝居の部分が多くあり、演出付きのオペラとして上演する場合も、この芝居の部分をどう上演するかが議論の種となる
・今回の演奏会形式では、この芝居の部分は全て省き、代わりにプロの俳優による語りを挿入している
・この語りは、芝居部分を説明するものでなく、「4年後のロッコのモノローグ」となっている
・4年後のロッコがオペラの物語の当時を振り返って、娘を幸せにしてやれなかった後悔やらの心情を吐露する内容となっているらしい
・ドイツ人のヴァルター・イェンスという文学者が1980年代に、フィデリオの上演に合せて書いたテキストであるとのこと
ラジオで聴いた随時挿入される語り(ドイツ語を解さないので内容がさっぱりわからなかった)の疑問が晴れて納得!
横浜の公演では日本語字幕が付くはずなので、どんな内容か楽しみです!
このテキストが既に80年代に書かれていたもので、それを再現しようという試みがまた素晴らしいではないですか。誰のアイデアなのかしら(←聞いてみれば良かった)
<カンマーフィルの演奏について>
・コントラバスが舞台の左側、バイオリンは左右に分かれて配置
→いわゆる「対向配置」と言われる形式と思われます
作曲当時の演奏形式を取り入れた演奏となっている模様
<フィデリオというオペラについて>
・交響曲や器楽曲を得意としたベートーヴェンの作品だけあり、パーヴォさんいわく、フィデリオは「シンフォニックオペラ」
・このパーヴォさんの言葉から、舩木さんは、フィデリオ第2幕のフィナーレ部分で歌われる歌詞の内容に、第九の第4楽章のシラーのテキストと共通する部分があることを指摘して、説明されました
(優しき妻を得た者は われらの歓呼に 和すが良い)
(歓喜→Freude をもって高らかに レオノーレの勇気を称えよう)
・最後におまけ
実際のオペラの上演では、第1幕の序曲が終わるとすぐにマルツェリーネとヤッキーノの場面になるが、このプロジェクトでは、ここに例のロッコの語りが入る
・舩木さん、この部分を日本語に翻訳して、実際に序曲を流してから語りを再現してくださるというサービスパフォーマンス!
・これがとても楽しく、実際の上演がますます楽しみになりました
ざっとこんな感じのイベントで、興味深い話をたくさん聞かせていただき、参加して良かったなぁ〜と思いました。
私は当日、このイベントの前にみなとみらいホールで都響のマーラーチクルスを聴いたのですが、そこにこのイベントのチラシが入っていました。舩木さんが話してくださった内容が、このチラシに完結にまとめられていますので、ご興味のある方はご覧になってください。