ペレアスとメリザンド を好きになれるか?

クロード・ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」。もともとフランス音楽には苦手意識があり、今まで積極的に聴いてこなかったし、私はきっとドビュッシーよりもフォーレが好きだ。このオペラ、暗いとばかり聞くし、途中で寝てしまうとか、最後まで聞き通せない、とかいう声もある。

今年の夏、マルク・ミンコフスキが指揮したオーケストラアンサンブル金沢の定期公演で、このペレアスとメリザンドセミステージ形式で上演された。ミンコフスキが総監督を務めるボルドー国立歌劇場で上演された公演を、歌手も含めてそのまま再現した素晴らしい上演となったそうだ。私もこの公演は金沢まで聴きに行くつもりだったが、仕事や遠征費用の都合で断念。作品に馴染みがなかったことも断念した原因の一つだった。

ちょうど今、ドイツ旅行を考えていて、このペレアスとメリザンドも鑑賞の機会がありそうなので、外国に行ってまで観ようと思える作品かどうか、試しに一度観てみなければと思い立ち、TVの録画リストの中から発見した2012年のエッセン歌劇場の映像を鑑賞してみた。

どうだったかというと。。。映像の作り方のお陰だと思うが、音楽というよりは、メーテルリンク原作の物語に引き込まれ、最後まで2時間半、飽きることなく見終わった!
このレーンホフの演出は、各シーンの最初にあらすじが英語の字幕(もちろん日本語翻訳つき)で紹介されるのだ(実際の上演では、このようなあらすじ字幕があったのかどうかはわからない)。これから上演される物語の説明を読んでから、それが舞台上で舞台装置と歌と演技で再現されるものを見せられるので、物語がとても解りやすい。本当に最初から最後まで救いようのない暗い作品にもかかわらず、見終わった感想は「面白かった」だった。

歌手の歌は、レチタティーボのように音楽にのせて語られて行く形式のもので、アリアのような歌は皆無。オーケストラの奏でる音楽も歌の伴奏と言えるものでなく、歌の旋律とも関係なさそうで、これで歌手はよく歌えるものだと感心してしまった。そういう意味で、ちょっとワーグナーみたいな印象も持った。前半の方で、ワーグナーパルジファルのような音楽だと感じられる場面もあった。

きっと、日本語字幕のない状態で公演を観たら、今日のようには楽しめないだろうことは十分に予想されるけれど、実演を体験してみたいと思った。

少なくとも、ペレアスとゴローの歌手はフランス語ネイティブと思われる。歌の中でのフランス語の発音って、こんなふうに聴こえるのだなと興味深かった。もっとも、私が聞き取れ、意味もわかったフランス語は、ウィとジュテーム、だけだったけれど。

ちなみに、今晩観た作品の概要は次の通り。2017年にクラシカ・ジャパンで放映されたもの。

エッセン歌劇場2012『ペレアスとメリザンド

ジャック・インブライロ(ペレアス/バリトン)

ミヒャエラ・ゼリンガー(メリザンド/メゾ・ソプラノ)

ヴァンサン・ル・テクシエ(ゴロー/バリトン)

ヴォルフガング・シェーネ(老王アルケル/バス)

ドリス・ゾッフェル(ジュヌヴィエーヴ/メゾ・ソプラノ)

マテウシュ・カバラ(医師/バス)

ドミニク・エーベルレ(イニョルド/ボーイソプラノ)

演出:ニコラス・レーンホフ

指揮:シュテファン・ゾルテス

演奏:エッセン・フィルハーモニー管弦楽団、アールト劇場オペラ合唱団

合唱指揮:アレクサンダー・エーベルレ

収録:2012年10月アールト劇場(エッセン)

映像監督:マルクス・リヒャルト

全5幕:約2時間32分